【M&Aの失敗事例】1億円で売却した会社が3.5億円に? 適正価格を知らずに損をしないための企業評価の基本

M&Aにおいて、自社の「適正な売却価格」を把握することは、経営者の方が長年かけて築いてきた会社を正当に評価してもらうための第一歩です。
 
しかし現実には、担当者の経験・知識の差によって企業価値が不当に低く見積もられ、意図せず安値で売却してしまうケースが存在します。
 
今回は、M&A会社の提案を鵜呑みにした結果、本来得られるはずだった数億円の利益を逃してしまった実際の失敗事例をもとに、正しい企業評価の重要性について解説します。

【失敗事例】純資産での売却提案を信じてしまったシステム開発会社

あるシステム開発会社(A社)の事例をご紹介します。
 
【A社の経営状況】
 
事業内容:顧客企業に自社およびパートナー企業の技術者を約100名派遣
業績  :売上高7~8億円、営業利益4000万~5000万円(営業利益率5%超)
財務状況:総資産6億円、現預金1.5億円、借入金3億円、純資産1億円超
 
63歳のオーナー社長は自身の病気を理由に早急な事業承継を希望し、あるM&A仲介会社に依頼しました。
 
その際、担当者から提示された売却価格の目安は「純資産とほぼ同額の約1億円」でした。
 
担当者にM&Aの十分な知見がなかったものの、早期の承継を優先したオーナーはその提案を受け入れ、結果として投資ファンドに対して1億円で会社を売却しました。
 
オーナー自身は個人保証から解放されるという目的を果たしましたが、この価格設定には見過ごせない問題がありました。

本来の適正価格はいくらだったのか? 営業利益から導く企業価値

企業の株式価値を算定する一つの指標として、「営業利益の倍数(マルチブル)」を用いる方法があります。
 
この倍数は業種や市場環境によって変動しますが、A社のようなシステム技術者派遣業は人材不足を背景に需要が高く、一般的に「営業利益の6倍から8倍」が標準的な水準とされています。
 
これをA社に当てはめて計算してみます。
 
事業価値: 営業利益4,000万円 × 8倍 = 3億2,000万円
純有利子負債: 借入金3億円 - 現預金1.5億円 = 1.5億円
株式価値の目安: 事業価値3億2,000万円 - 純有利子負債1.5億円 = 1億7,000万円
 
仮に営業利益を5,000万円で計算すれば、5,000万円 × 8倍 = 4億円となり、純有利子負債1.5億円を差し引いた目安は約2億5,000万円となります。
 
実際にはここからさらに個別事情(余剰資金の加算や未払い金などの減算)を調整するプロセスが必要です。それでも客観的に見て、「1億円」という価格は明らかに割安な設定でした。

1年半後に「3.5億円」で転売。失われた2.5億円の利益

この割安な案件を、投資ファンドが見逃すはずもありませんでした。
 
彼らはシナジー効果を目的としたわけではなく、単に「相場より安かったから」という理由で買収したのです。
 
事実、この投資ファンドは買収からわずか1年半後、A社を「3.5億円」で別の企業へ売却し、2.5億円もの利益を得ました。
 
この1年半で会社の実態や市場環境に劇的な変化はなく、3.5億円こそがA社の本来の市場価値だったと考えられます。加算要素を適切に反映すれば、当初からこの水準での売却は十分に可能だったはずです。
 
M&A仲介会社の知識不足と、適切な買い手を探す努力の欠如。
 
その結果、売り手であるオーナーは2.5億円もの収益機会を逃しました。さらに、短期間で二度も売却されるという事態は、残された従業員たちに大きな不安と混乱をもたらしたことでしょう。

失敗しないために。企業評価と売却価格に関するよくある疑問(Q&A)

Q. 会社の売却価格は、決算書の「純資産」で決まるわけではないのですか?
 
A. 本来、企業価値は純資産という過去の蓄積だけで決まるものではありません。事業の将来性、継続的な収益力、ブランド力、顧客基盤などを総合的に評価する必要があります。特に利益を安定して生み出している企業であれば、事例のように営業利益をもとに事業価値を算出するプロセスが不可欠です。
 
Q. 適正な価格で売却するためには、売り手として何に注意すべきでしょうか?
 
A. 最も重要なのは、正しい企業評価の知識を持ち、自社の価値を適正に算定できる「信頼できるアドバイザー(専門家)」を選ぶことです。最初から1社に限定するのではなく、複数の専門家に意見(セカンドオピニオン)を求め、提示された評価額の根拠をしっかりと確認することが、安値での売却を防ぐ最大の自衛策となります。

まとめ:自社の適正価値を知り、後悔のないM&Aを実現する

M&Aを成功させるためには、正しい企業評価を行い、最良の買い手を見つけ、適正な価格で売却することが大切です。
 
専門家の知識不足によって適正価格を知らされないまま契約を進めると、事例のように大きな機会損失を被るだけでなく、従業員の未来にも影響を及ぼしかねません。
 
アドバンストアイでは、財務数値はもちろん、目に見えない強みや将来性までを丁寧に分析し、企業価値を最大化する適正な評価とアドバイスを提供しています。
 
「自社の本当の価値を知りたい」
「他社から提示された評価額が妥当か確認したい」
 
そうお考えの経営者の方は、ぜひ一度ご相談ください。正式なご契約まで、費用は一切いただきません。

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