事業承継M&Aの成功事例・失敗事例

事業承継で会社を売却することを決断したものの、タイミングやM&A会社選びを間違えると「結局会社を売却できなかった」「思ったほど高く売却できなかった」「希望の条件で売却できなかった」といったような、事業承継M&Aで失敗したり損をしたりするケースがあります。
 
ここでは事業承継M&Aで“成功した事例・失敗した事例”についてまとめました。

事業承継M&A成功事例ケース1)利益はほぼゼロ、借入金は数千万の旅行会社

成功事例1)旅行業のA社の場合
  • 業種:旅行業
  • 売上:1億円
  • 収支:赤字ではないが利益はほぼゼロ
  • 従業員数:5名
  • 売却条件:売却後も65歳までは社長業を継続したい

この会社の業務内容は、学生のホームステイ先を紹介するという事業になります。海外のホームステイ先を多数ネットワークしているのがこの会社の大きな特長になります。売上は1億円、累積も債務超過もありませんが、銀行からの借入金が数千万円ありました。
 
事業承継M&Aを検討したのは、社長が第一線での仕事がきつくなってきたことが理由になります。
 
社長は会社の売却金額を年商と同額の1億円と単純に考えていましたが、1億円の年商はあるものの、ほとんど利益がでていない状態に、借入金も数千万あったので、希望額を叶えるのは少し難しいようにも最初は思えました。

ほぼ利益はゼロ、だけど9000万で会社を売却できた理由

ほぼ利益はゼロ、だけど9000万で会社を売却できた理由

当社では会社売却のプロセスに入る前に、会社の見えない価値を見つけて好条件で売却するための磨き上げを行います。

※磨き上げの詳細につきましてはこちらをご参照ください。

この旅行会社を調べていくと、きちんとメンテナンスされた数千件ものホームステイ先のリストを保有していることがわかりました。これは決算書などの数字ではわからない“無形の企業価値”になります。
 
この数千件ものホームステイ先を会社の強みにして、買手会社を探した結果、大手旅行会社に売却が決まりました。やはり評価されたのは数千件のホームステイ先リストでした。
 
買手会社はきちんとメンテナンスされた数件件もの膨大なホームステイ先リストを活用することで、これまでにないビジネスチャンスが生まれる可能性があると判断、9000万円でM&Aが成立しました。
 
また、売却の条件にあった社長業継続等の条件も満たされ、社長は売却金額とは別に5年にわたって毎年2000万円の社長報酬が支払われることにもなりました。

  • メンテナンスされた数千件のホームステイ先リストが評価
  • 9000万円でM&Aが成立
  • 買収後も5年間社長報酬として毎年2000万円支払われる

事業承継M&A成功のポイント

この会社のケースでは、会社の磨き上げで、きちんとメンテナンスされた数千件ものホームステイ先リストを保有していることが会社の強みとなり、会社の価値を高めることにつながりました。
 
そして、この会社の強みが生かされてシナジー効果が高い大手旅行会社を売却先候補として見つけだしたことが成功のポイントになります。

>関連コラム:M&Aとは?種類別のメリットと基本的な流れを徹底解説します

事業承継M&A成功事例ケース2)債務超過に赤字、倒産しそうなシステム会社

事業承継M&Aは、業績不振に悩む会社を救う可能性もありますが、まさにこの事例が当てはまります。

成功事例2)システム開発会社のB社の場合
  • 業種:システム開発業
  • 売上:1.2億円
  • 収支:債務超過に赤字
  • 備考:近い将来に倒産の可能性もあり

この会社の事業内容はシステム開発になります。

資本金1000万円、売上1.2億円のよくある規模の会社ですが、長年の業績不振で今や債務超過に陥り、銀行からの借入金でなんとかしのいでる状態でした。

債務超過に赤字、だけど2000万円で売却できた理由

債務超過に赤字、だけど2000万円で売却できた理由

当社が行った磨き上げでは、決算書や試算表といった財務諸表では、会社の強みを見つけることができませんでした。
 
そこで数字の精査をいったんおいて、社員インタビューや受注状況などのフィールド調査を実施したところ、他社にはない“会社の強み”を発見することができました。
 
その会社の強みとは従業員です。この会社の従業員は優秀なSEやプログラマーが在籍、平均勤続年数も5年以上でした。
 
M&Aプロセスを進めた結果、最終的には同業のシステム開発会社に2000万円でM&Aが成立しました。また5000万円あった銀行からの借入金は買収先の会社が負担することになりました。
 
売却せずにこのまま事業を継続していたら、かなり高い確率で倒産することが予想されましたが、磨き上げで会社の強みを発見することにより、会社を2000万円で売却、全ての負債からも解放され、会社売却はまさに救済策となった事業承継M&Aの成功事例になります。

  • 働いている従業員のスキルやノウハウが買手会社に評価された
  • 債務超過にもかかわらず2000万円でM&Aが成立
  • 銀行からの借入金5000万円は買手会社が負担

事業承継M&A成功のポイント

システム開発のようなノウハウ型企業の場合、ノウハウは人に依存しているところがポイントになります。そして、ノウハウを持っている人が他社に流出しないで長く留まっていることは、それ自体も会社の強みになります。
 
会社の磨き上げで従業員のスキルが高いことやさまざまなノウハウを保有していることがわかりましたが、さらに約半分の社員が年収にして一人当たり約200万円も安い賃金で働いていることもわかりました。
 
この会社の場合、従業員のスキルやノウハウ、水準よりも賃金が安かったことが会社の強みとなったのが成功のポイントになります。

事業承継M&Aを成功させるためのポイントは会社の“磨き上げ”

事業承継M&Aを成功させるためのポイントは会社の“磨き上げ”

2つの事業承継M&Aの成功事例をご紹介しましたが、どちらのケースも磨き上げを実施して“会社の強み”を発見したことが成功のポイントになります。
 
この二つの成功事例からもわかるように、M&Aプロセスに入る前の事前準備である磨き上げの重要性がわかるかと思います。
 
ただし、磨き上げはどのM&A会社でも実施するわけではありません。
 
依頼するM&A会社が磨き上げを実行できるかどうか、磨き上げの実績はあるかどうかを確認するようにしてください。

>関連コラム:事業承継の事前の準備や対策について

事業承継M&Aの失敗事例)売上4億、広告業界でも定評のあるデザイン会社

失敗事例)広告デザイン会社のC社の場合
  • 業種:広告デザイン業
  • 売上:4億円
  • 従業員:20名

この会社は大手電機メーカーの商品や大手スーパーのプライベートブランド商品のパッケージなど、幅広く手掛けるデザイン会社として、広告業界で定評のある仕事をしていました。
 
社長が高齢を理由に廃業を考えているという噂を聞いた同業者が、廃業するくらいなら従業員ごと会社を譲ってもらえないかと相談を受けて接触をしたら、すでに社長は廃業を決めて、同社のデザイナーたちも辞めてしまった後でした。
 
その後、退職したデザイナー5名で新しい会社を設立したそうですが、新会社が継続できた大手取引先は3割程度だったそうです。

売れる可能性があったのにタイミングを逃して廃業

売れる可能性があったのにタイミングを逃して廃業

この会社の社長は「高齢=廃業」と単純な発想で廃業を決めたようですが、もしこれが「従業員が会社を買う」といった形態の事業承継M&Aを実行していたらどうだったでしょうか。
 
社長は数千万円の売却金額を得て経済的メリットがあるほか、会社を買った従業員も取引先を引継ぐことができて、既存顧客を失うことはなかったはずです。事業承継M&Aという選択肢で、結果は大きく変わっていたと思います。
 
この失敗事例は、社長にも従業員にも事業承継M&Aの知識がなかったばかりに起こってしまったケースになります。

  • 社長や従業員に会社売却の知識がなく、業績が好調にもかかわらず廃業
  • 従業員が新たに会社を立ち上げるも既存顧客の7割を失う

トラブル急増中!中小企業の会社売却

【結果】会社売却をしようとするも、時すでに遅し

以前は大企業を中心に行われてきたM&Aですが、ここ20年ほどの間で認知されるようなったことに加えて、経営者の高齢化も背景に、現在では中小企業でも活発に行われるようになりました。
 
しかし、その裏では売却後に後悔をしたというケースや、売手側が損をするというケースでトラブルに発展することが急増しています。

トラブルの理由1)売手企業に「知識・情報・経験」がない

トラブルが急増している理由としてまず挙げられるのに、売手側に「M&Aに関する知識や情報、経験がない」ことがあります。
 
こうしたトラブルを事前に避けるためにも、売手側の経営者も会社売却に関する知識や情報を身につけておく必要があります。

会社売却で売手側が損をする理由
  • 会社売却に関する知識がない
  • 会社売却に関する情報がない
  • 会社売却に関する経験がない

トラブルの理由2)M&A会社の選び方

会社を売却しようとしても「誰に相談をしたらいいのかわからない」という経営者の方が大半かと思います。
 
一般的には、会社の売却はM&A会社に相談をすることが多いですが、M&A会社には、“仲介会社”と“アドバイザリー(助言)会社”の2つのタイプがあります。
 
仲介会社は利益相反という問題を抱えており、決して売手側だけの味方ではありません。売手企業と買手企業の妥協点を見つけてM&Aを成立させるため、売手側は思ったよりも安い金額での売却になってしまったというケースもあります。
 
とはいえ、M&A成立までのスピードを重視するのであれば、仲介会社のほうが早いこともあるので、仲介会社とアドバイザリー(助言)会社のそれぞれの会社の特徴を知った上で依頼することが大切です。

トラブルの理由3)会社を売るための準備をしていない

M&Aの現場では、会社のどんな点が評価されるのかはさまざまです。
 
目に見える利益が上がっていたり、預金や不動産などの資産があれば、それが評価されて会社の値段に組み込まれることは当然ですが、数字面が悪くても、数字ではわからない会社の価値があれば、それは買手企業にとって魅力的だと評価されることもあります。
 
会社を1円でも高く、のれんや事業、技術はもちろん、従業員の待遇もできる限り良くして、次の会社へバトンタッチ(会社売却)をするためには、会社の売却を進める前に、会社の価値を見つけるための事前の準備がとても重要になります。
 
この事前の準備をM&Aでは「磨き上げ」といいます。

>関連コラム:M&Aとは?種類別のメリットと基本的な流れを徹底解説します

会社売却の事前の準備“磨き上げ”は具体的に何をする?

会社を売る前の事前の準備「磨き上げ」では、会社の問題点を見つけて改善をしたり、会社の強みを見つけて、会社の価値を高める作業を行います。
 
「そうはいっても、うちの会社は規模が小さいから価値なんて見つかるのだろうか?」と思われる経営者もいるかもしれません。規模が小さくても赤字でも、ほとんどの会社で「会社の強み」を見つけることがあります。
 
また最近では、規模が小さくても、特長のある会社を買いたいという買手企業も増えてきました。財務の数字以外にも、数字ではわからない会社の価値が評価されて、M&Aが成立することも珍しくありません。
 
以下のような視点から会社を分析して会社の強みを見つけることで、より良い条件や金額で会社を売却することができます。

取引先 買手企業が欲しがる「魅力的な取引先」を持っていないか?
顧客 どんな顧客をどのように管理しているか?
従業員 スキルは?定着率は?現在の賃金は?
シェア ニッチな市場でも、シェアを持っていれば高く売却できる
特許・技術・情報 他社にはない技術はないか?
その他の特徴 買手企業は「企業風土が合うか合わないか」も見る

会社売却で後悔しないためには“磨き上げ”を行うことが大切

会社売却後にトラブルに巻き込まれたり、後悔をしないよう、何よりも経営者も従業員も満足のいく結果になるよう、経営者は会社売却に関する正しい知識を持つことが何よりも大切です。
 
会社売却を成功させるとは、希望する売却価格と条件で、自社がさらに発展するような相手に会社を売却することにほかなりません。すべてが希望通りではなかったとしても、最終的に納得できるものであれば成功といっていいでしょう。
 
逆に会社売却の失敗とは、会社売却が不成立になってしまうこと。あるいは、売却できたとしても、たたきうりのような金額、納得できる水準からかけ離れてしまうことです。
 
会社売却が成功するかどうかは、たとえ同じ会社であったとしても、その準備の仕方ひとつで違いがでてくるものです。自社の魅力を最大限にアピールするためにも、事前の準備である「磨き上げ」はしっかりと取り組みたいところです。

「磨き上げ」はM&A会社と一緒に行う。ただし…

会社の強みを見つける「磨き上げ」は、M&A会社と一緒に行うことが一般的です。ただし、磨き上げを実行できるM&A会社、実行できない(しない)M&A会社もあるので、M&A会社と面談をするときは、磨き上げについても質問してみることをおすすめします。
 
納得できる条件や価格で会社を売却するためには、事前の準備で左右されます。
 
“財務上価値”・“無形の価値”を洗い出し、“自社の強み・弱み”を把握して、会社の体制を整えることが、会社売却を成功させるポイントになります。ですから、会社売却を一緒に進めるM&A会社選びは慎重に行ってください。

>関連コラム:事業承継の事前の準備や対策について

事業承継M&A成功の第一歩は、M&A会社選びから

事業承継M&A成功の第一歩は、M&A会社選びから

事業承継M&Aを成功させるためには、会社売却のプロセスに入る前の事前の準備である会社の“磨き上げ”がとても重要になります。
 
磨き上げの課題を自社で見つけることは容易ではないので、一般的にM&A会社と一緒に行います。ただし、M&A会社でも磨き上げが得意・不得意があるので、磨き上げの実績があるM&A会社を探すことが重要になります。
 
当社は長年、事業承継M&Aにおける磨き上げに取り組んでまいりました。豊富な実績と経験豊かなコンサルタントが、会社の強みや価値を見つけて、好条件で会社を売却するためのサポートをいたします。お気軽にお問い合わせください。

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