【鉄則】後出しは絶対NG!M&Aで失敗しない「売却条件の整理」と情報開示の極意

会社の磨き上げをして、売却の方向性が決まったら、M&A会社と一緒に進めるのが「売却条件の整理」です。
 
しかし、ここで条件の優先順位を曖昧にしたり、情報開示のステップを間違えたりすると、せっかくのM&Aが破談になるトラブルに直面してしまいます。
 
この記事では、売却価格や従業員の待遇といった条件の決め方から、機密情報を守るための開示のステップまで、M&Aを成功に導くための鉄則を解説します。

1. トラブルを防ぐ!絶対に譲れない「売却条件」は最初に決める

M&Aでは、株式売却か、事業譲渡か、会社を分割して売却するのかといった取引の手法を検討し、希望する条件を整理します 。
ここでの最大の落とし穴は、「交渉の途中で後から条件を追加すること」です。
 
主要な条件を交渉の途中で提示したりすると、買い手企業は嫌がります。
 
売却価格以外の条件を交渉の後半に言いだし、買い手企業との間で「こんな話は聞いていない、最初から言ってくれよ」と破談になるケースは少なくありません。
 
だからこそ、譲れない条件がある場合は、最初から提示するようにしましょう。具体的には、以下の項目を整理しておきましょう。

整理すべき3つの条件

1)売却価格と支払い方法
まずはM&A会社による価値評価を参考にして、希望の売却価格を決めます。また、一括払いを求めるか分割払いを認めるか、対価の支払いは現金か買手企業の自社株での支払いを認めるかといった条件も一つひとつ決めていきます。
 
2)アーンアウトの検討
株式をすべて売却した後も会社に残り、将来にわたって一定の成果がでたとき、ボーナスとして現金やストックオプションでもらう「アーンアウト」という方法もあります。
 
3)経営体制と従業員の待遇
「従業員の雇用を維持してほしい」「創業の地から移転しないでほしい」など、売却後の希望をまとめます。
 
「従業員の雇用体系を維持してほしい」「創業の地から少なくとも10年間は移転しないでほしい」など、売却後の経営体制や従業員の待遇などの希望条件をまとめます。
 
ただし、こうした条件の提示は買い手企業にとって制約になるので、価値を減価させる可能性もあります。
 
一方で、売り手側の取引先や従業員が超中期的に担保されることが売り手会社の収益基準を維持すると判断されれば、評価が向上する場合もあります。
 
このように条件提示は一長一短があるので、プラスマイナスの効果を含めて検討するようにします。

2. 情報漏洩を防ぐ!「釣書」と「企業概要書」の正しい使い方

売却の条件がまとまれば、いよいよ買手候補を探すフェーズに入ります。しかし、ここで最も気をつけなければならないのが「情報開示のコントロール」です。
 
万が一、自社が身売りに出ているという噂が取引先や従業員に漏れてしまえば、会社の信用問題や離職に直結してしまいます。そのため、M&Aでは以下のように段階を踏んで、慎重に情報を開示していくのが鉄則です。

ステップ1:まずは「釣書(ノンネームタームシート)」で興味を惹く

最初から社名や詳細を明かすことは絶対にありません。まずは会社名を完全に伏せた匿名の資料である「釣書(ノンネームタームシート)」を作成し、買い手候補にアプローチします。
 
ここでは、「広島県でレンタカー事業を展開」「売上は20億円前後」「創業以来の増収増益」といったように、「どこの会社かは特定されないけれど、買い手企業の興味を強く惹きつける情報」を戦略的に記載するのがポイントです。

ステップ2:「企業概要書(IM)」での情報の「出しすぎ」に注意

釣書を見て「ぜひ詳しく知りたい」と手を挙げた企業が現れたら、ここで初めて厳格な「秘密保持契約(NDA)」を結び、社名や詳細な財務情報が載った「企業概要書(IM)」を開示します。
 
しかし、ここに大きな落とし穴があります。「秘密保持契約を結んだからもう安心」と、初期段階ですべての情報を包み隠さず出してしまうのは危険です。
 
契約を結んでいても、買手企業の社内で複数人が検討資料として目を通す以上、情報が完全に秘匿されるという絶対の保証はありません。
 
顧客の個別データや、自社のコアとなる独自の技術ノウハウといった「極めて機密性の高い情報」については、基本合意を結び、交渉が最終段階(デューデリジェンス等)まで進むまでは開示しないのが無難です。情報開示のタイミングを見極めることも、M&A成功の重要なカギとなります。

3. 買手候補の選定は「異業種」が穴場になることも!

買い手企業の候補リストが出来上がった際、ぜひ確認していただきたいのが「特定の業種や同業種ばかりに偏っていないか」という点です。
 
M&Aと聞くと、つい自分たちと同じ業界のライバル企業や大手企業をイメージしがちですが、実は思わぬ「異業種」の企業が、御社の価値を高く見出してくれるケースがあります。

同業種への売却に潜むリスク

同じ業種の会社に売却した場合、買い手企業は「重複している部門や拠点を統合して効率化したい」と考えるため、事業の統廃合が行われる可能性が高くなります。
 
結果として、長年貢献してくれた従業員の雇用体系が変わってしまったり、取引先との関係が絶たれてしまったりと、現場にとってデメリットになるリスクが潜んでいます。

異業種への売却が「今の陣営」を守る

逆に、異業種の企業からの買収は「その新しい事業分野に参入したい」という明確な目的を持っています。
 
買い手側にはその業界の専門知識がないため、売手企業を基点にして事業を広げていこうと考えます。そのため、現在の従業員や事業拠点といった「今の陣営」をそのまま頼りにし、維持してくれる確率が非常に高くなるのです。
 
候補先を選ぶ際は、同業種だけに絞らず、広い視野で異業種とのマッチングも検討することが、従業員を守る幸せなM&Aに繋がります。

4. 【要注意】M&Aプロセスでよくある3つのトラブル事例

よくあるトラブル事例)複数依頼や情報漏えいによるトラブル

M&Aのプロセスが進む中で、ちょっとしたボタンの掛け違いが大きなトラブルに発展することがあります。ここでは、実際によく起こる失敗事例をご紹介します。

① 交渉の後半で条件を追加するトラブル

売却価格ばかりが気になり、それ以外の条件を交渉の後半になって言い出すケースです。
 
買手企業との間で「こんな話は聞いていない、最初から言ってくれよ」と揉め、そのまま破談になるケースは少なくありません。

② 複数のM&A会社に並行して依頼するトラブル

複数のM&A会社に並行して動いてもらうと、状況が複雑になって整理できず、トラブルになることがあります。
 
売却の条件がまとまっていない状態で、複数のM&A会社が同じ買手企業に売却話を持ち込んだ結果、「M&A会社によって提示される条件が異なっていた」という最悪のケースもあります。
 
また、関わる人間が増えることで社内関係者に情報が漏洩するトラブルのリスクも高まります。

③ 「概算譲渡金額」を鵜呑みにしてしまうトラブル

M&A会社と契約する前、売手企業の概要情報に基づいて、概算の譲渡金額やイメージする候補先が提示されることが一般的です。
 
しかし、これはあくまで参考情報なので、そのまま受け取るとトラブルに発展する可能性があります。
 
実際のプロセスに入ってから、当初の候補先にコンタクトできなかったり、参考価格からほど遠い金額を提示されたりして、最終的に劣悪な条件を押し通されて会社を売却してしまったケースなどもあります。

失敗しないために!売却条件・トラブルに関するよくある疑問(Q&A)

Q. 早く売却したいので、複数のM&A会社に並行して動いてもらっても良いですか?
A. あまりおすすめしません。
複数のM&A会社に同時に依頼すると、進行状況が複雑になり整理しきれなくなるだけでなく、同じ買手企業に対してM&A会社ごとに異なる条件が提示されてしまうなど、深刻なトラブルに発展するリスクがあります。信頼できる1社に絞って、しっかりと足並みを揃えて進めるのが成功の近道です。
 
Q. M&A会社が最初に出してくる「概算の譲渡金額」は信じても大丈夫ですか?
A. あくまで「参考情報」として捉えてください。
契約前に提示された概算の譲渡金額をそのまま鵜呑みにしてしまうと、実際のプロセスに入ってから想定していた買手候補にアプローチできなかったり、当初の価格から大きく乖離した劣悪な条件を押し通されてしまったりするケースがあります。甘い言葉だけを信じず、自社の適正な価値を冷静に見極めることが大切です。

まとめ:自社の適正価格を知り、事前の準備を徹底しよう

会社の売却を成功させるためには、売却条件を整理する事前の準備が非常に大切です。無益なプロセスに入ることを避けるためにも、売手企業はまず「自社の適正な価格」を知っておくことが重要になります。
 
アドバンストアイでは、基本的な財務情報を入力するだけで会社の売却価格を自動で算定するツールをご用意していますので、ぜひご活用ください。

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