親族に事業承継をする場合の相続税対策

課税対象となる財産を減らす対策

息子などの親族に事業承継をする場合、取り組まなければならないのが相続税対策になります。

相続税や贈与税は、計画的に対策することで、納税額を軽減させることができます。ここでは、親族に事業承継をする場合の相続税対策についてまとめました。

相続税をおさえるポイント1)株式の評価額を下げる

非上場会社の場合、類似業種比準価額方式と純資産価額方式で会社の株価を評価しますが、評価時の要素を下げることで、株価の評価額を下げることができます。

方法1 類似業種比準価額を下げる

類似業種比準価額を算出するときの要素である、1)1株あたりの配当金額、2)年利益金額、3)純資産価額を引き下げることで、自社の株式の評価額を下げることができます。

類似業種比準価額を下げる対策例
  • 設備投資を行って費用を増やす
  • 生命保険に加入する
  • 不良債権、不良在庫を処分する
  • 退職金で特別損失を計上する
  • 稼働していない固定資産を処分する

方法2 純資産価額を下げる

準資産価額方式は、純資産価額をもとに株価を算出します。純資産価額を減らすことで、自社の株式の評価額を下げることができます。

純資産価額を下げる対策例
  • マンションに投資する
  • 不動産を購入する
  • 遊休不動産を活用する

これらの方法を、会社に悪影響を与えない範囲で行います。

相続税をおさえるポイント2)生命保険などで評価額を下げる

生命保険金の非課税枠などで、課税対象となる財産を減らす方法になります。
 
たとえば、不要な不動産を売却してマンションなどの賃貸物件に買い替えることで、相続財産の課税価額を引き下げることができます。またこの方法で、推定相続人に賃貸物件を贈与すれば、賃貸収入によって将来発生する相続税の納税資金を形成することもできます。
 
財産を計画的に贈与することで、相続財産自体を減らす方法や生命保険や役員退職金で支払金額を損金として扱い、自社の株価の評価を下げる方法などもあります。

相続税をおさえるポイント3)特例を使って評価額を下げる

一定の要件を満たすと、大幅な減額軽減が認められるのが「小規模宅地等の特例」です。土地を相続するときはぜひ使いたい特例です。
 
たとえば、現経営者が所有している事業用宅地(不動産貸付事業以外)を後継者が相続した場合、申告期限までに事業を承継したとき、宅地の場合は400平米までの面積について80%が減額されます。
 
この特例は要件が細かく設定されているので、事前によく確認をして適用を受けられるようにすることが大切です。
 

特定同族会社事業用宅地 被相続人及びその親族が50%を超える出資が株式を所有している会社の事業に使っていた土地 400平米まで80%の評価減
特定住居用宅地 被相続人、もしくは被相続人と生計が同じ親族が、住居として使っていた宅地 330平米まで80%の評価減
特定事業用宅地 1)被相続人が事業に使っていた宅地
2)被相続人と生計が同じ親族が事業に使っていた宅地
400平米まで80%の評価減
貸付事業用宅地 被相続人、もしくは被相続人と生計が同じ親族が、不動産賃貸業や駐車場経営などに用いていた土地 200平米まで50%の評価減

国税庁:No.4124 相続した事業の用や居住の用の宅地等の価額の特例(小規模宅地等の特例)

相続税をおさえるポイント4)計画的な生前贈与

現経営者が生存中に、後継者に株式や事業用資産を贈与すると、基本控除額を利用すれば税の負担を軽減することができますが、贈与税には、1)暦年課税と、2)相続時精算課税の2つの課税方式があります。
 
暦年課税は、1年間に110万円まで非課税で贈与することができます。計画的に利用すれば、大きく節税をすることができます。
 
相続時精算課税は2500万円までが非課税になります。この制度を使って贈与された財産は、相続時に相続税の課税対象になりますが、早期に贈与して運用することで納税資金対策ができるというメリットがあります。

贈与税の税率について

贈与税の税率は、贈与を受けた財産の金額が大きくなるほど、税率が高くなる超過累進課税が採用されます。税率には、特例税率と一般税率の2つのコースが用意されています。

  • 特例税率
  • ・父母から子ども、祖父母から孫への贈与
    ・贈与を受けた人が贈与を受けた年の1月1日において20歳以上であること
    ・贈与をした人が直系尊属(父母や祖父母)であること
     

  • 一般税率
  • ・上記要件を満たさない場合

一般贈与財産用(一般税率)
基礎控除後の課税価格 税率 控除額
200万円以下 10%
200万円超~300万円以下 15% 10万円
300万円超~400万円以下 20% 25万円
400万円超~600万円以下 30% 65万円
600万円超~1000万円以下 40% 125万円
1000万円超~1500万円以下 45% 175万円
1500万円超~3000万円以下 50% 250万円
3000万円超~4500万円以下 55% 400万円
4500万円超~ 55% 400万円
特別贈与財産用(特例税率)
基礎控除後の課税価格 税率 控除額
200万円以下 10%
200万円超~300万円以下 15% 10万円
300万円超~400万円以下 15% 10万円
400万円超~600万円以下 20% 30万円
600万円超~1000万円以下 30% 90万円
1000万円超~1500万円以下 40% 190万円
1500万円超~3000万円以下 45% 265万円
3000万円超~4500万円以下 50% 415万円
4500万円超~ 55% 640万円

国税庁:No.4408 贈与税の計算と税率(暦年課税)

贈与税は、相続税の補完税なので、相続時に比べて税額が高く設定されています。どちらの方法が有利なのか、専門家と一緒にシュミレーションをして計画的に進めるのが理想です。

相続税の税率

2015年1月より、相続税の最高税率が従来の50%から55%(相続財産の評価額が6億円超の場合)へと増額されました。
 

法定相続分に応ずる取得金額 改定前の税率 改定後の税率 控除額
1000万円以下 10%
3000万円以下 15% 15% 50万円
5000万円以下 20% 20% 200万円
1億円以下 30% 30% 700万円
2億円以下 40% 40% 1700万円
3億円以下 40% 45% 2700万円
6億円以下 50% 50% 4200万円
6億円超 50% 55% 7200万円

国税庁:No.4155 相続税の税率

相続税は現金での一括納付が原則となります。たとえ、生前贈与等で一定の資産が分割されていたとしても一度に数億円もの相続税を払うことは大変です。なかには、会社や個人の資産を担保にして借金をして納税するケースもあります。
 
息子などの親族に事業承継をする場合は、現経営者の在任中から計画的に相続税対策をすることが重要になります。
 

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