ニッチトップ企業が異業種M&Aで高評価された理由

市場シェアは、企業の評価、特にM&A市場における企業価値を大きく左右する重要な要素です。
 
たとえニッチな市場であっても、揺るぎないトップシェアを確立していれば、事業が一時的に赤字であったとしても、会社売却を実現できる可能性は格段に向上します。
 
今回は、特定の分野でほぼトップシェアだった会社の売却事例をご紹介します。

最終利益20年!ニッチトップ企業が異業種M&Aで高評価された理由

中古自動車のオンライン売買プラットフォームを運営するA社。
 
中古車市場全体で見ればそのシェアは限定的でしたが、インターネットという急成長するチャネルに特化することで、そこでは競合を寄せつけない圧倒的なトップシェアを確立していました。
 
このA社の独自性とオンライン市場でのシェアに目をつけたのが、新たな収益の柱として金融事業への参入を戦略的に検討していたB社になります。
 
B社にとって、A社の買収は単なる事業拡大ではありませんでした。A社が持つ強固な顧客基盤とオンラインでの影響力を活用することで、自動車保険やオートローンといった金融商品をフックに、B社にとっては未開拓であった自動車関連金融サービス市場へ圧倒的なスピードで参入することが可能だったからです。
 
結果として、A社の確立された顧客基盤と安定した収益性、そして何よりもこの買収がB社にもたらす新たな事業展開への戦略的優位性が高く評価されました。
 
A社の売買代金は、最終利益の20年分にも迫るという破格の“のれん代”が上乗せされ、極めて高額な取引となりました。

シェアが低い場合はどうしたらいい?

必ずしもトップシェアでなくても、市場の競争環境が追い風となり、有利な条件で会社売却が実現するケースもあります。
 
地方で葬儀場を営むC社は、売上高2億円前後、収支は均衡状態、約5000万円の借入金を抱える企業でした。県内におけるシェアは、約10%弱と二番手グループに属し、トップシェア獲得にはほど遠い状況でした。
 
しかし、この県の葬儀市場には特有の構造があり、シェア30~40%をそれぞれ握る二社が存在し、両社は市場のシェア争いをしていました。
 
C社自体は、業務内容や営業エリアにおいて際立った強みを有していたわけではありません。しかし、この二社から見れば、C社を買収することは、いっきに約10%弱のシェアを獲得し、競争相手に対して優位に立つための戦略的に極めて大きな意味を持っていました。結果として、1社がC社の価値に注目して買収を提案。C社にとっては、予想を大きく上回る好条件でのM&Aが成立しました。
 
この事例は、買い手企業もシェア拡大という強い動機を抱えており、そのニーズが時として、M&Aの成否や条件を大きく左右する要因となることを示しているのではないでしょうか。

M&Aにおける「地域・ニッチNo.1」の価値とは

「シェア」と聞くと、多くの方が「世界市場」や「国内市場全体」といったマクロな視点を思い浮かべるかもしれません。しかし、中小企業のM&Aにおける企業価値評価では、そうした広範な視点だけが判断基準となるわけではありません。
 
たとえ限定的なニッチな市場であっても、そこで圧倒的なNo.1シェアを確立しているのであれば、それは強力なアピールポイントとなります。現時点での業績が必ずしも芳しくなくても、そのニッチトップの地位が将来性を感じさせ、買い手を見つけ出し、企業売却を実現できる可能性は十分にあります。
 
もちろん、「駅前の商店街のみ」といった極めて限定的な範囲では、その価値を訴求するのは難しいかもしれません。しかし、少なくとも特定の市町村、あるいは都道府県といった一定の地域やセグメントで確固たる地位を築いているのであれば、その価値を見出す企業は必ず現れます。
 
重要なのは、「自社がどのような市場で、どれだけのシェアを有しているのか」を客観的に分析・把握し、その事実を具体的なデータに基づいて買い手候補へ論理的かつ魅力的に提示できるかという点です。
 
「地方の小さな会社だから、とくに特徴はありません」
「この地域では、長年商売をさせてもらっています」
 
こうした曖昧なアピールでは、買い手は会社が持つ価値を理解することはできません。
 
「地方の小さな会社」であっても、その地域における揺るぎない顧客基盤や高いシェアを誇っているかもしれません。「長年商売をさせてもらっている」という事実は、地域からの厚い信頼の証であり、それは具体的な数値や実績として可視化できるはずです。
 
自社の強みを客観的な指標(具体的な数値、データ、顧客の声など)で「見える化」し、それを根拠に伝えること。この戦略的な情報開示こそが、企業の評価を高めて想像以上の好条件でのM&A成立へとつながる可能性があります。

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