M&Aで従業員(人材)が評価されるケース

豊富な業務知識や高い専門性を持つ従業員は、企業にとって重要な資産です。
 
今回は、特殊な業務知識が高く評価されて、M&Aが成立した事例をご紹介します。

小さなシステム部門がM&Aで高評価された背景

ある上場企業が、別の上場企業のシステム部門のM&Aを実施しました。対象部門は従業員約20名の小規模な組織でしたが、中小企業の規模であるこの部門が、なぜ買収対象となったのでしょうか。
 
その理由は、単に現在の業務内容や人数だけではなく、部門に所属する従業員の一人ひとりのスキル、過去の業務経験、業務知識の深さ、特殊な技術といった蓄積を詳細に評価した結果、高い付加価値を生み出す能力があると判断されたからです。
 
ですから、従業員のスキルが、企業価値として高く評価されたケースであるともいえます。
 
特に買い手企業から注目されたのは、多くの技術者が大規模なシステムの統合経験があり、さらに一部の技術者においては、汎用機システムの統合に豊富な経験を持っている点でした。
 
このように、従業員の持つ業務知識や経験がM&Aで高く評価されるケースは少なくありません。単なる従業員数や現在の業務内容だけではなく、各個人や組織がこれまでに培ってきた経験や知識の蓄積が、予期せぬ価値として評価されることがあります。
 
そして、このような評価軸においては、従業員の平均年齢が高いことが必ずしもマイナス要因になるとは限りません。むしろ、経験豊富な高齢の従業員が長年培ってきた深い知識や経験、あるいは特定の顧客との関係などが、M&Aでは高い価値を持つ場合があります。
 
実際、この事例の20名のうち、5名は60歳前後でした。一般的には、IT業界で60代の従業員に即戦力としての高い価値を見出すことは少ないかもしれません。しかし、IT業務の中には、幅広い専門知識や深い経験が不可欠な領域があり、そうした人材でなければ適切な顧客提案が難しいと考える企業もあります。
 
現在においても、古いシステムや技術に精通した人材や、豊富な経験を持つミドル・シニア層が不可欠とされる分野は存在します。特定の目的のために、一時的にでもそうした人材が必要とされる場面では、部門ごと買収されるといった形で高く評価される可能性は十分にあります。

あなたの会社の人材、M&Aで評価されますか?

若く、高い技術を持つ人材が多くいても、定着率が悪く、人材の頻繁な入れ替えが発生している企業は、M&Aの企業価値評価において、プラスどころか、マイナス評価となる可能性さえあります。
 
現在において、安定した人材基盤は企業価値として高く評価される傾向があります。
 
今回のIT企業のM&Aの事例においても、システム開発に付随する保守業務では、担当者が頻繁に入れ替わると十分な習熟度が確保できません。これは顧客の安心感を損なう要因ともなり、買収側としては、少なくとも5年程度は定着が見込める人材が揃っているという点も評価された側面がありました。
 
もちろん、長期の定着が必ずしも常に良いとは限らず、組織の硬直化や新たな視点の不足といった課題が生じる可能性もあります。
 
しかし、長期にわたり職場に定着する人材が生む安心感や業務の継続性は、特に顧客との長期的な関係性が必要な業種などにおいて、企業価値評価における重要なプラス要因となり得ます。

従業員も目に見えにくい「人材資産」である

M&Aでは、単に人数や現在の技術力といった表面的な要素だけではなく、豊富な業務知識、長年の経験、特定の技術に関する深い専門性といった、従業員一人ひとりが過去に培ってきた蓄積が、企業価値として高く評価されるケースがあります。
 
また、こういった評価軸の場合、従業員の年齢が高いことは必ずしもマイナス要因にはなりません。
 
むしろ、経験豊富な人材が長年かけて蓄積した深い知識や、特定の顧客との強固な関係性などが、M&Aにおいて高い価値を生む場合があります。また、人材の「安定性」や組織の「流動性の低さ」も、特に人手不足が慢性化している現在においては、企業価値を左右する重要な要素となることもあります。
 
従業員の経験やスキル、定着率など、目に見えにくい「人材資産」も、M&Aでは企業価値向上に大きく貢献する可能性があります。

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