M&Aの準備期間はどれくらい?最短で売却するためのスケジュールと「事前準備」で株価を上げる方法

M&Aを検討し始めた経営者にとって、「いつから準備を始めればいいのか」は最初の悩みです。
 
結論から言えば、M&Aの成約までには最短でも6カ月、通常は1年程度の期間が必要です。しかし、この期間を単なる「手続きの時間」と考えてはいけません。
 
実は、本格的な交渉が始まる前の「準備期間」こそが、自社の企業価値(株価)を最大化し、有利な条件で売却できるかを決める勝負の時間なのです。
 
この記事では、M&Aの標準的なスケジュールと、準備期間中にやっておくべき「ToDoリスト」について解説します。

M&Aの全体スケジュールと所要期間の目安

M&Aは相手のある取引であり、会社の規模や業種によって期間は変動しますが、一般的には「最短で6カ月、標準的には1年程度」の期間を要します。
 
全体の流れは大きく3つのフェーズに分かれます。それぞれの工程で「誰が・何を・どれくらいの期間で行うのか」を把握しておきましょう。

フェーズ1:準備・検討(目安:1ヶ月〜3ヶ月)

このフェーズは、まだ具体的な相手を探す前の「社内の準備期間」です。多くの経営者が「早く買い手を見つけたい」と焦るあまり、この工程を飛ばそうとしますが、それは非常に危険です。
 
ここでは、自社の磨き上げ(プレM&A)、M&A戦略の策定、そして信頼できるアドバイザーの選定を行います。「自社の強みは何か」「いくらで売りたいか」「譲れない条件は何か」を明確にし、決算書の修正や資料作成を行うこの期間が、最終的な成約価格(バリュエーション)を決定づける最重要フェーズと言っても過言ではありません。

フェーズ2:相手探し・交渉(目安:3ヶ月〜6ヶ月)

準備が整ったら、いよいよ買い手候補への打診を開始します。まずは社名を伏せた「ノンネームシート(匿名資料)」で興味のありそうな企業にアプローチし、関心を示した先と秘密保持契約(NDA)を結び、詳細な情報を開示します。
 
その後、経営者同士の「トップ面談」を行い、互いのビジョンや相性を確認します。買い手にとって魅力的な「人気企業」であれば、わずか1ヶ月で意向表明(買収オファー)が届くこともありますが、条件が合わない場合は、半年以上かかるケースもあります。焦らず、最適なパートナーを見極める忍耐力が必要な時期です。

フェーズ3:最終契約・クロージング(目安:1ヶ月〜3ヶ月)

基本合意に至った場合、買い手による買収監査(デューデリジェンス/DD)が行われます。ここでは、財務・法務・税務などの専門家が入り、売り手企業に「隠れたリスク(簿外債務や訴訟リスクなど)」がないかを徹底的に調査します。
 
この監査結果をもとに、最終的な譲渡価格や条件のすり合わせ(最終交渉)を行い、株式譲渡契約を締結します。その後、代金の決済と株式の引き渡し(クロージング)が行われ、晴れてM&Aは完了となります。

準備期間は「待ち時間」ではない!株価を上げるためのToDoリスト

M&Aの準備期間を、単に「買い手が見つかるのを待つ時間」と捉えていては、大きな機会損失を生んでしまいます。この期間は、自社の企業価値(株価)を自らの手で引き上げるための投資期間です。
 
買い手から足元を見られず、少しでも有利な条件を引き出すために、以下の3つのToDoは必ず実行してください。

1. 「磨き上げ」による正常収益力の証明

中小企業オーナーの多くは、節税のために利益を圧縮しているケースが少なくありません。しかし、M&Aでは「どれだけ利益が出ているか(正常収益力)」が評価額に直結します。
 
まずは、公私混同している経費(私的な交際費や社用車など)を明確に除外し、会社本来の実力が分かる決算書を作成しましょう。また、長年赤字を出している不採算部門がある場合は、M&A前に整理・閉鎖を検討することも重要です。「選択と集中」を行い、見栄えの良い筋肉質な財務体質にしておくことで、買い手かあの評価は劇的に向上します。

2. 簿外債務や法務リスクの事前除去

買い手が最も恐れるのは、買収後に発覚する「隠れたリスク」です。特に、未払い残業代や社会保険の未加入、契約書の不備などは、最終段階の買収監査(デューデリジェンス)で必ず指摘されます。
 
これらが交渉の土壇場で見つかると、大幅な買収価格の減額を要求されたり、最悪の場合は破談になったりします。今のうちに顧問弁護士や社労士と連携してリスクを洗い出し、精算できるものは今のうちに綺麗にしておくことが、最終的な価格を守るための鉄則です。

3. 企業概要書(IM)の作成準備

会社の魅力は、決算書の数字だけでは伝わりません。「長年培った独自の技術ノウハウ」「強固な顧客との信頼関係」「従業員の高いスキル」といった目に見えない資産(無形資産)こそが、買い手が本当に欲しい価値である場合が多いです。
 
しかし、これらは言語化して伝えなければ、買い手には伝わりません。アドバイザーと協力し、「会社の強みはここだ!」「買収すればこんなシナジーがある!」というアピールポイントを論理的に整理し、魅力的なプレゼン資料(企業概要書/IM)に落とし込む準備をしましょう。

M&Aを「急ぐ」ことのリスクとは?

M&Aの検討において、「時間がない」という状況は、売り手にとって最大のリスク要因となります。
 
特に、業績が悪化し、資金繰りが厳しくなってから慌ててM&Aを検討し始めるのは、絶対に避けなければなりません。

足元を見られて「買い叩かれる」可能性

M&Aの交渉は、心理戦でもあります。もし、買い手企業に「この会社は資金繰りが苦しい」「〇月までに売却しなければ倒産する」という焦りを悟られてしまったらどうなるでしょうか。
 
買い手は当然、「彼らは断れない状況だ」と判断し、本来の企業価値よりも大幅に低い金額(足元を見た価格)を提示してくるでしょう。これはいわゆる「救済型M&A」や「再生案件」と呼ばれる状態であり、売り手は提示された安値を飲むしか選択肢がなくなってしまいます。
 
「まだ余裕がある」
「断ろうと思えばいつでも断れる」
 
この精神的・資金的な余裕(交渉カード)を持っているうちに準備を始めることこそが、高値売却を実現するための鉄則です。

M&Aの期間に関するよくある質問

Q. 最短どれくらいで成約できますか?
A. 早ければ3ヶ月程度で成約するケースもあります。
ただし、これは「事前の準備が完璧」で「買い手とすぐに巡り会えた」場合に限られます。通常は余裕を持って1年程度を見込むのが安全です。
 
Q. 準備期間中に業績が悪化したらどうなりますか?
A. 売却価格が下がる、または交渉が破談になる可能性があります。
そのため、M&Aの準備中であっても「本業をおろそかにしない」ことが最も重要です。経営者が交渉に集中しすぎないよう、アドバイザーや右腕社員の活用がカギになります。
 
Q. 秘密裏に進めることはできますか?
A. はい、可能です。
初期段階では社名を伏せた「ノンネームシート」を使用し、秘密保持契約(NDA)を結んだ買い手候補だけに詳細情報を開示するため、従業員や取引先に知られることなく進められます。

まとめ:余裕を持った準備が「高値売却」への近道

「売りたい」と思った時にすぐ売れるとは限りません。
 
時間的な余裕は、交渉の余裕(=安売りしない強さ)に直結します。「1年後にハッピーリタイアしたい」とお考えなら、今すぐ準備を始めましょう。

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