実務面の磨き上げのポイント③

M&Aの交渉の現場で、会社の何が評価されるのか、その基準は様々です。
 
目に見える利益や資産が評価されるのは当然ですが、会社の評価はそれだけではありません。むしろ、それ以外の要素が企業価値を大きく引き上げるというケースもあります。
 
財務諸表上の資産や利益だけの「目に見える価値」だけではなく、「目に見えない価値」が買い手から評価されることもあります。
 
この「目に見えない価値」をどのようにして評価へつなげるか。今回は、企業をより高く売却するために不可欠な「目に見えない価値」の具体的な要素と、それを最大限に活かすための実務について詳しくご紹介します。

「〇〇といえば、あの会社」で企業価値を最大化する

M&Aに限りませんが、特定の分野でトップシェアを獲得することは、企業価値の飛躍的な向上につながります。その「特定の分野」とは、例えばニッチ市場、限定的な地域、細分化された製品カテゴリーなど、規模の大小を問いません。
 
「〇〇といえば、あの会社」
 
このようなポジションを確立し、市場をリードできるようになれば、新たな商品やサービス展開もスムーズに進みます。結果として、企業価値が向上し続ける好循環が生まれるはずです。
 
この「〇〇といえば、あの会社」という評価は、強力なブランド価値を形成することができます。M&Aの局面においては、このような企業は、買い手からの引き合いが高まり、より有利な条件での売却を実現できる可能性が高まります。
 
例えば、以下のような評価を確立できれば理想的です。
 
「食品トレーサビリティなら、この会社」
「沖縄の格安レンタカーといえば、この会社」
「トランクルームのことなら、この会社」
 
しかし、必ずしもこれほど広範な認知度が必要なわけではありません。大切なのは、会社の強みを明確に打ち出し、それが事業の本質や将来性を想起させることです。
 
まずは、自分の会社に「〇〇といえば、この会社」と表現できる価値が存在するか、探してみてください。
 
「わが社を一言で表すなら?」「他社にはない、わが社ならではの形容詞は何か?」
 
こうした問いを立て、丁寧に自社を分析し、どんな小さなことでも構わないので、独自の強みを見つけてください。
 
既存事業の製品に「エッジ」が効いていれば理想的ですが、成長途上の新事業、開発中の新商品・新サービスであっても、そこに明確な強みや将来性を見いだせるなら注力し、売上や利益を成長軌道に乗せることができたら、さらに可能性が広がるのではないでしょうか。
 
「こんな顧客層に深くリーチできている」「他社には真似できない、こんなノウハウを蓄積している」
 
このように小さなことでも、それが会社の特徴を端的に表現できる独自の価値であるならば、さらに磨き上げをしていくことで、M&Aの可能性が広がるはずです。

見えない価値を「見える化」「使える化」する重要性

会社の価値は、財務諸表の数字だけではありませんが、M&Aを成功に導くためには、数字には表れない「見えない価値」を積極的に発見し、買い手企業にその魅力と具体的な活用の可能性を提示することが大切です。
 
そのポイントとなるのが、価値の「見える化」と「使える化」です。
 
1. 「見えない価値」を発掘し、「見える化」する
 
まずは、顧客基盤、取引先との関係性、保有する研究開発の成果など、社内に眠る潜在的な価値を洗い出します。
 
そして、その価値が買い手にとって、どのようなメリットをもたらし、新たな事業展開やシナジー創出に、どのような貢献ができるのかを具体的に示せるよう、情報やデータを整理して「見える化」することが重要です。
 
顧客情報:
 
個人情報を適切に管理・活用している場合、顧客の属性(居住地域、年齢、性別、職業、家族構成、年収、趣味など)を分析することは、潜在的なニーズや目に見えない価値を顕在化させる場合が多くあります。
 
例えば、特定の属性を持つ顧客層の購入傾向やリピート率が突出して高いといった特徴を明確にできれば、買い手は自社事業とのシナジー効果を具体的に想像しやすくなり、評価向上に直結する可能性もあります。
 
取引先情報:
 
大手企業との直接取引実績、信用力の高い企業との安定的な継続取引、成長企業との取引などは、事業の安定性と成長性を示すことができます。
 
また、入手困難な原材料や特殊な商品を、長年の信頼関係によって安定的に調達できているルートも、買い手にとっては大きな魅力になることもあります。
 
仕入れ先情報:
 
仕入れ条件(単価、ロット、納期など)を整理しておくことも有効です。買い手が自社の購買力を活かすことで、より有利な条件での仕入れが可能になるなど、具体的なコスト削減効果を提示することができれば、企業価値評価にプラスに働くこともあります。
 
このように、顧客や取引先に関する情報は、丁寧に整理・分析することで、見過ごされてきた価値を「見える化」することができます。

実務面での磨き上げのポイント
  • 自社のエッジを立てる
  • 発見した価値を「見える化」「使える化」する

M&Aにおいて、会社にどんなに素晴らしい潜在価値があっても、それを買い手に効果的に示すことができなければ、適正な評価にはつながりません。
 
発見した価値をまず「見える化」し、さらに買い手が具体的なメリットを伝えるために「使える化」することが、M&Aを成功させるための事前の準備の大切なポイントになります。

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