M&Aで失敗する企業に共通する「7つの失敗」

事業承継問題の解決、新規市場へのスピーディーな参入、イノベーションの加速。現在の企業経営において、もはやM&Aは特別な選択肢ではなく、成長戦略に不可欠な手段として重要性を増しています。
 
しかし、その活況の裏では、多くのM&Aが期待したシナジーを生み出せず、思ったほどの効果を得られなかったと評価されるケースが多いのも事実です。
 
なぜ、このような結果になってしまうのでしょうか。「7割のM&Aが失敗に終わる」と言われることもありますが、今回は、M&Aで多くの企業が陥りがちな「7つの失敗」についてご紹介したいと思います。

M&Aで失敗しないための7つのセルフチェックリスト

なぜ、多くのM&Aは期待された成果を上げられずに終わるのでしょうか。実は、失敗する企業にはいくつかの共通点が見られます。
 
M&Aを検討中の方にとって、これは決して他人事ではありません。これから挙げる項目に自社が当てはまらないか、ぜひご確認ください。

失敗1)戦略なき「目的不在」のM&A

「なぜ、今回のM&Aを行うのか?」
 
この質問に、役員全員が即答できないなら、そのM&Aは危険な状態だと言えます。「目的が曖昧であること」は、失敗に至る最も古典的で、最も根深い問題です。
 
M&Aは、企業の成長戦略を実現するための「手段」に過ぎません。
 
目的がなければ、買収後に「この会社と、どうやって事業提携を進めればいいんだ?」と現場では誰もが戸惑い、ましてやシナジーを生み出すことは難しいのではないでしょうか。

失敗2)根拠のないシナジー効果

「わが社の販売網と、A社の技術力を組み合わせれば、売上は3倍になるはずだ!」
 
このようにM&Aを検討中の段階では、順風満帆な未来を描きがちです。エクセルシート上では、クロスセルによる売上増、間接部門の統合によるコスト削減など、数字の上では完璧なシナジー効果が描き出されます。
 
「こうなったらいいな」という希望に基づいた計画は、現場の現実を把握できていないことがほとんどです。
 
「そもそも、両社の顧客層は本当にマッチしているのか」
「営業スタイルや評価制度が全く違う組織をどう連携させるのか」
「ITシステムの統合は想定内に収まるのか」
 
実行段階で直面する課題に対して検討が甘いと、シナジー効果は計画通りに実現せず、「話が違うじゃないか」という結果になることも。

失敗3)デューデリジェンス(DD)で数字しかみない

デューデリジェンス(DD)では、財務諸表や契約書など、数値化できる情報の検証に偏りがちです。
 
しかし、本当に注意すべきなのは、組織文化、キーパーソンの存在、顧客との関係といった、数字には現れない「定性的な価値」や以下項目のような「見えないリスク」ではないでしょうか。
 
・ビジネスDD:「売上の8割が、社長個人の人脈に依存している」といった事業構造のリスク
・人事DD  :「優秀なエンジニアが離職を検討している」といったキーパーソンの流出リスク
・ITDD   :「基幹システムが老朽化し、数年以内に莫大な刷新コストがかかる」といった隠れた負債

失敗4)引き返せない心理

M&Aの交渉は、しばしば経営者の冷静な判断を狂わせることもあります。特に、他にも買い手候補がいる競争環境下では「ここで引いたら負けだ」「この案件を逃したら次はない」といった感情から、合理的判断ができなくなってしまうことも。
 
また、長期間にわたる交渉で、多大な時間と労力を費やした結果、「ここまで来たら、もう後には引けない」というのも典型的なパターンではないでしょうか。その結果、客観的な企業価値を大幅に超える価格で買収をしてしまうことも。
 
過大な投資は、買収後の経営を圧迫する巨額の「のれん」となり、将来の業績が計画を下回ったときには、「のれんの減損」という形で企業の財務にダメージを与えることもあります。

失敗5)「PMI(統合プロセス)」の失敗

M&Aを「結婚」に例えるなら、契約締結はゴールではなく、ようやくスタートラインに立ったに過ぎません。しかし、多くの企業が契約締結を終えたことに満足してしまい、その後の最も重要な統合プロセス(PMI)を軽視しがちです。
 
「統合後のことは、買収が決まってから考えよう」
「あとは現場がうまくやってくれるはず」
 
統合初日(Day1)に明確なビジョンが示されず、業務ルールも曖昧なままでは、現場は混乱し、期待したシナジーは生まれません。
 
PMIの準備不足は、M&A最大の失敗要因であるとも言えるのではないでしょうか。

失敗6)「企業文化の融合」の失敗

制度やITシステムの統合などは、時間やコストをかければ可能です。しかし、正解のない「企業文化」の統合は、PMIでもっとも難しい部分なのではないでしょうか。
 
・スピードを重視するベンチャー文化と合意形成を重んじる大企業文化
・トップダウンの意思決定とボトムアップの意思決定
 
このような企業の価値観の違いは、社員同士の間に見えない壁を作り、溝を生み出すこともあります。
 
これらの問題を放置したり、一方の文化を無理やり押し付けたりすれば、深刻な反発は避けられません。その結果、組織の活力が失われ、最悪の場合、優秀な人材が会社を去っていくという結果になることも。

失敗7)過去の成功体験

「過去に小さな買収を成功させたことがあるから、今回も大丈夫だ」
「外部の専門家は慎重すぎる。我々のビジネスセンスを信じるべきだ」
「現場の懸念は、単なる変化への抵抗に過ぎない」
 
こうした経営陣の姿勢は、客観的なリスク分析を妨げ、多様な意見を軽視することにつながります。
 
過去の成功体験に固執し、耳の痛い情報から目を背け、トップダウンでディールを進める。その先にあるのは、取り返しのつかない失敗かもしれません。

結論:M&Aを成功させるために

ここでは、M&Aで失敗する企業に共通する「7つの失敗」についてご紹介させていただきました。
 
M&Aの成功は、交渉力やディールの金額だけで決まるわけではありません。交渉のテーブルにつく前の徹底した事前準備と、契約成立後の地道な「PMI(統合プロセス)」が大きく影響します。このように契約締結の裏にあるプロセスが、M&Aの成功につながる確率が高まります。
 
M&Aは、決してゴールではありません。会社が新たな成長ステージに上がるための、スタートにすぎません。M&Aの成功は、あくまで持続的な企業価値向上という、より大きな目的を達成するための第一歩ではないでしょうか。

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