【M&Aの基本】シナジー効果の重要性

M&Aの成功を左右する重要な要素の一つが「シナジー効果」です。これは、それぞれの企業が単独で活動する以上の価値を生み出す「相乗効果」を意味します。
 
例えば、一方の技術力ともう一方の販売網をかけ合わせて、新たな市場を開拓したり(売上シナジー)、管理部門の統合や共同仕入れによって無駄をなくしたり(コストシナジー)することが挙げられます。
 
このように両社の強みを効果的に組み合わせて、単独では困難だった成長を実現することがM&Aの大きな目的になります。

シナジー効果はどうやって数値化するのか?

例えば、売上10億円、利益5000万円のA社と、売上5億円、利益2500万円の同業B社が存在すると仮定します。
 
A社がB社を買収した場合、単純に計算すると、売上15億円、利益7500万円の企業が誕生します。しかし、M&Aで目指すのは、足し算以上の効果があるシナジーの創出です。
 
例えば今回の仮定のM&Aでは、以下のようなシナジー効果を期待することができます。
 
仕入コストの削減(コストシナジー)
事業規模の拡大に伴う購買力の向上により、サプライヤーに対する価格交渉が有利に進み、原価削減につながります。
 
販路拡大やクロスセル(売上シナジー)
A社はB社の顧客へ、B社はA社の顧客へ、それぞれの製品やサービスを提供することで、新たな収益機会を創出することができます。
 
管理部門の効率化(コストシナジー)
バックオフィス機能(経理、人事、総務など)を統合することで、重複業務をなくし、固定費を削減することができます。
 
これらの施策を実施したとき、統合後の営業利益が1億円に増加したと仮定すると、以下のようにシナジー効果は算出されます。
 
シナジー効果(2500万円)= 統合後の利益(1億円)- 両社の利益の単純合計(7500万円)

M&Aにおけるシナジー効果の具体例

M&Aによって期待されるシナジー効果には、他にも以下のようなものがあります。
 
1. 重複機能の統合によるコストシナジー
本社機能や管理部門を統合することで、重複する人件費やオフィス賃料といった固定費を削減することができます。同様の効果は、販売拠点や物流施設の統廃合によっても期待できます。
 
2. 規模の経済による競争力の強化
研究開発部門を統合し、予算や人材、設備を集約することで「規模の経済」を働かせることが可能になります。これにより、単独では難しかった大規模な研究開発に着手でき、結果として市場における競争優位性を高めることができます。
 
3. クロスセルによる売上シナジー
買収によって得た相手企業の顧客基盤や販売チャネルを活用し、自社の製品・サービスを販売(クロスセル)することができます。これにより、自社単独で新規開拓を行うよりも、効果的かつ迅速に、新たな収益機会を創出することが可能です。
 
4. 財務シナジーによる資金調達力の強化
事業規模の拡大や統合による信用力の向上は、金融機関からの評価を高めます。その結果、より有利な条件での資金調達が可能になったり、被買収企業の資金調達コストが改善されたりといった財務上のメリットが期待できます。
 
買い手企業は、これらのシナジー創出を前提とし、定量的に評価した上で、統廃合の事業計画を策定します。この計画に基づいて算出される企業の将来価値が、最終的な買収価格の算定における判断材料となります。

交渉を円滑に進める「攻めのシナジー提案」

M&Aは企業の成長戦略として有効な一方、必ずしも成功するとは限りません。
 
ある監査法人が実施した調査によると、M&Aを実施した企業の8割以上が「統合後に何らかの課題を抱えている」と回答しています。この結果は、多くのM&Aにおいて期待されたシナジー効果が十分に発揮されていない現実を浮き彫りにしています。
 
考えられる原因としては、M&Aの交渉段階で、シナジー効果が具体的に検討されず、定量的な根拠が曖昧なまま契約が締結されてしまうといった「戦略的な準備不足」が考えられます。
 
このことは活発なM&A市場の裏で、買い手・売り手双方にとって深刻な課題になっています。
 
しかし考え方によっては、自社の売却を検討している経営者にとっては、交渉を有利に進めることができる大きなチャンスとなり得る可能性があります。
 
「貴社との統合によって、これだけのシナジーが期待できます」
「その根拠となるデータはこちらです」
 
このように、売り手側から具体的かつ能動的にシナジーを提示することで、円滑にM&Aを進めることが可能になります。特に、次のようなケースでは、売り手からの論理的な提案が極めて有効に働きます。
 
・買い手が異業種で、潜在的なシナジーに気づきにくい場合
・買い手が上場企業など、株主への説明責任からシナジー効果を厳格に評価する必要がある場合
 
買い手の視点に立ち、期待されるシナジーをデータに基づいて分かりやすく説明する。この事前の戦略的準備こそが、円滑な交渉を実現し、自社の企業価値を最大化する大切なポイントになります。

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