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アドバンストアイには大手上場企業から、中堅企業、小規模企業まで、さまざまな売上規模の会社のM&Aを手がけてきました。
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前回は、M&Aに向けた企業価値向上のための基礎的な取り組みについてご紹介しました。
財務面の磨き上げは、M&Aの成否を直接決定づけるものではありませんが、企業価値を一層高め、より魅力的な売却条件を引き出し、広範な優良企業からの関心を得るためには欠かせない戦略です。
特に、上場企業や大手企業をM&Aの買い手候補として想定する場合、中小企業であっても「経営管理体制の適正化・高度化」は、買い手からの評価を大きく左右するポイントになります。
取引契約の精査と整備、迅速かつ正確な月次決算体制の構築、経営判断に役立つ各種管理指標のデータ化、社内規定の整備、そして実効性のある内部統制システムの構築などを、自社の状況に応じて計画的に実行することが推奨されます。
今回は、これらの施策を通じてM&A市場において、より高い評価を得るための「財務面の磨き上げ」について、詳しくご紹介します。
M&Aにおいて「経営管理体制の適正化・高度化」は、企業価値を大きく高め、好条件での売却を実現するための鍵となります。
顧客や仕入先との契約内容の精査と整備、取引条件の明確化と改善、迅速な月次決算体制の確立は、最低限整備すべき必須事項になります。
さらに、購買プロセスの見直しによるコスト効率化、金融機関との取引関係の整備や最適化、固定費の削減なども、積極的に検討し実行することで、更なる企業価値向上が期待できます。
同時に、自社事業の競争力を見極め、それを買い手企業に明確に伝え、具体的なシナジー効果を期待させるような形で「見える化」し、活用可能な状態に「使える化」する取り組みの重要性も増しています。
中小企業の事業承継においても、M&Aが一般的な選択肢となる現代において、売り手企業が独自の強みを持ち、それが買い手企業の経営資源と融合することで明確なシナジーを生みだせるという期待感の醸成は、M&Aの交渉を有利に進める上で不可欠です。
こうした企業価値向上と買い手への訴求力強化を実現するために、財務面では特に以下の3つのポイントに焦点を当てた磨き上げが効果的です。
M&Aによる企業価値向上を目指す上で、まず着手すべきは、収益構造とコスト構造の抜本的な見直しです。具体的な取り組みの例として以下のようなものがあります。
1. 不採算事業・商品の整理・撤退判断の迅速化
不採算部門や将来性の乏しい商品・サービスについては、速やかな撤退・廃止を検討することが重要です。やむを得ない事情で即時撤退が難しい場合でも、具体的な撤退スケジュールを策定し、それを社内外に明示することで、経営判断の透明性と計画性が評価され、買い手候補からの信頼獲得につながります。
2. 徹底したコスト削減意識の浸透
無駄な経費の削減は、M&Aの成否に関わらず企業経営の基本ですが、特にM&Aを成功させるためには、買い手企業に対して自社の徹底したコスト管理体制をアピールする必要があります。細部にわたり経費構造を見直し、コストカットを断行する姿勢が求められます。
3. 仕入れ・購買プロセスの最適化によるコストダウン
中小企業において、日々の業務に追われ、仕入れや購買プロセスが最適化されていないケースがよくあります。
取引先の集約とボリュームディスカウントの活用
複数の取引先に少量ずつ発注している慣習を見直し、取引先を集約したり、一度の発注ロットを戦略的に調整したりすることで、ボリュームディスカウントによるコスト削減効果を追求する。
競争原理の導入
単発の購入だけではなく、継続的な取引に関しても、定期的に相見積もりをとったり、場合によっては競争入札を導入したりすることで、より有利な条件を引き出す努力が不可欠です。
4. 取引関係の健全化によるマージン改善
取引において商社などの中間業者を介在させている場合、その必要性を検証することも大切です。信用補完や効率的な代金回収といった明確な付加価値を中間業者が提供しているのであれば合理的ですが、過去の経緯や人的なつながりだけで、実質的なメリットなくマージンを支払い続けているケースも見受けられます。これを機に、各取引を再評価し、不要な中間マージンを排除することで、仕入れ価格の適正化を目指しましょう。
5. 月次決算対応
売却候補先が広がる可能性を高めるためにも、月次決算体制の確立は極めて重要です。
年に一度、決算時に税理士に資料を渡し、そこではじめて試算表を確認するという体制では、買い手候補から「期中の経営状態を適切に把握・管理できていないのではないか」との懸念を抱かれかねません。
実際、多くの中小企業では期中の詳細な経営状況の把握が十分でないケースが見受けられますが、これはM&Aや事業承継を進める上で、見過ごせない課題となります。
もし現在、月次決算を導入されていない場合は、数カ月から半年程度の期間をかけてでも、月単位で経営状況を把握・管理できる仕組みを構築し、社内に定着させることが不可欠です。
M&Aで高い評価を得るためには、財務内容の健全化が極めて重要です。
買い手企業は、売り手企業の賃借対照表を精査し、事業実態にそぐわず過度に資産が膨らんでいる状態や、収益性の低い資産が多く含まれている状態を敬遠する傾向があります。
その理由は、買い手は投資回収期間の妥当性や、買収後に自社の連結財務諸表に取り込んだ際の営業利益率や株主資本利益率といった経営指標が悪化しないかを厳しく評価するからです。
そこで、M&Aの準備段階における重要な「磨き上げ」として、賃借対照表のスリム化、いわゆる「筋肉質な財務体質」への転換が求められます。
事業運営に直接貢献していない資産や長期間活用されていない遊休資産は、可能な限り売却・処分します。これにより得た資金を有利子負債の返済に充当したり、あるいは評価損を計上して税効果を享受したりすることで、財務基盤の強化を図りましょう。
税務面の磨き上げにおいて、特に企業価値に大きな影響を与えるのが、不採算事業の見直しと不良資産の整理です。不採算事業から生じる継続的な損失は、M&Aにおける企業価値評価においても極めてネガティブな影響を与えます。
したがって、これらの不採算事業の整理、遊休資産や不良資産の処理は、M&Aの検討段階から早期に着手することが賢明です。
M&Aにおける企業価値評価において、キャッシュフローは極めて重要な指標になります。そのため、財務の磨き上げにおいては、キャッシュフローの最大化と安定化を目指した取り組みが不可欠になります。
1. 売掛金回収サイクルの短縮化:企業価値向上への直接的貢献
例えば、現在3カ月の支払いサイトで契約している取引先に対して、2カ月への短縮を交渉したり、新規取引では一部前金の受領を条件としたりするなど、回収期間を可能な限り短縮するための具体的な改善策を検討・実行します。
回収サイクルの短縮は、特にDCF法(ディスカウント・キャッシュフロー)のように、将来キャッシュフローをもとに評価を行うときに、運転資本の圧縮を通じて企業価値を高める効果が期待できます。
2. 買掛金支払いサイクルの最適化:運転資金効率の向上
一方で、買掛金の支払いサイクルについても最適化が必要です。不必要に短い支払いサイトや、取引先からの過度な前金や保証金の要求、あるいは売掛金の回収期間よりも買掛金の支払い期間が著しく短いといった資金繰りを圧迫する条件は、運転資金の効率を著しく低下させます。
これらの条件を見直し、運転資金負担を最小限に抑えることは、将来の事業拡大に伴う資金需要の増加に備える上でも重要です。
3. 取引条件の交渉と経緯説明の重要性:デューデリジェンスへの備え
M&Aのデューデリジェンスでは、現在の取引条件に至った背景や経緯を明確に説明できることが場合によっては求められます。仮に現状が最適ではなくても、その理由を合理的に説明できれば、買い手企業は将来的な改善余地を評価に織り込む可能性があります。
キャッシュフロー改善のための取引条件の見直しは、特に長年の取引関係がある大手企業や金融機関、あるいは親密な関係先に対しては、交渉に困難を伴うことも少なくありません。
しかし、企業価値を最大化するためには、状況を慎重に見極めながら改善に取り組む姿勢が不可欠です。
財務基盤の強化は、M&Aの成否に直結するわけではありませんが、企業価値を高め、有利な売却条件を獲得する上で不可欠です。
自社の現状を冷静に評価し、戦略的な計画のもと、着実な改善を実行することが大切です。
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